学校が苦手だった子どもたちが、世界を変えた話
この記事の要点
学校で評価されにくかった特性が、後に強みへ変わることがあります。リチャード・ブランソンやイーロン・マスクの例と、ニューロダイバーシティの視点から親が持ちたい見方を整理します。
退学するリチャード・ブランソンに対し、当時の校長は、将来は犯罪者か大富豪のどちらかになるだろう、という趣旨の予想を伝えたとされています。ブランソンはその後、航空・音楽・宇宙事業などを展開するヴァージン・グループを創設しました。

通知表が最下位だった少年が、宇宙へ飛んだ
ブランソンは文字の読み書きが困難な「ディスレクシア(読み書き障害)」を抱えており、全ての教科でビリになるほど勉強が苦手でした。スポーツで怪我をしてからは勉強もスポーツも最下位という状況が続き、学校を中退することになります。
しかし彼はその後、自分が熱中できる活動へ力を注ぎました。本人は、ディスレクシアによる読み書きの難しさだけでなく、物事の全体像を捉える自分なりの考え方にも目を向け、それを仕事上の強みとして説明しています。孫にも、苦手さと強みの両面を伝えているそうです。
「学校はずっと地獄だった」イーロン・マスクの場合
テスラ、SpaceX、Xを率いるイーロン・マスクは、2021年の米テレビ番組「サタデーナイトライブ」に出演した際、自身がアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)であることを公表しました。
幼少期のマスクは、南アフリカの学校でひどいいじめを受け続けました。感情を読み取るのが苦手で、空気を読まない発言が多く、クラスになじむことができなかったといいます。一方で、「社会の常識を疑う力」「一つのテーマに異常なほどの情熱を注ぐ力」「他者の視線を気にしない力」。これらはまさに彼が世界を変えるうえでの原動力になりました。
学校という場所は、彼の「得意」を評価する仕組みを持っていませんでした。しかし彼の脳は、誰も気にしなかった問題に執拗にこだわり、独自の解答を見つけ続けました。
「ニューロダイバーシティ」という考え方
この2人に共通するのは、「学校のものさし」では測れない脳の使い方をしていたということです。
近年、「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という概念が世界で注目されています。ADHD・ASD・ディスレクシアなどは「欠陥」ではなく、脳の多様なあり方のひとつであるという考え方です。
心理学博士のラッセル・ラムゼイ氏の説明では、目的が明確な実践活動や、成果が見えやすい仕事がADHDの特性に合う場合があります。つまり、同じ人でも、環境や仕事との組み合わせによって力の表れ方が変わるということです。
でも、「成功者の話」だけでは終わらせたくない
正直に言えば、「有名人もADHDだったから大丈夫」というメッセージには、落とし穴もあります。
成功したのは一握りの例であること、多くの当事者は日々の生活に困難を抱えていること、これも事実です。ASD当事者が「自分には価値がない」と思い込んでしまうのは、本人の資質の問題ではなく、社会が提供する枠組みが狭すぎるからだという指摘は、とても重要な視点です。
大切なのは「この子も成功できる」と安易に励ますことではなく、「この子の脳の使い方を、親である自分がちゃんと知りたい」と思うことではないでしょうか。
親にできること: 「学校のものさし」以外を持つ
学校の成績や授業のペースは、子どもの可能性のほんの一断面にすぎません。
- 何に熱中するか
- どんな問いを立てるか
- 失敗してもどう立ち上がるか
ブランソンが図書館で小説を書き始めたように、マスクが本を読み漁ったように、「好きなこと」「没頭できること」の芽を、学校の外で見つけてあげることが、家庭ができる最も大切なことかもしれません。
学校が苦手でも、世界を変えた人たちがいる。それは「特別な才能がある子だけの話」ではなく、「学び方が合っていなかっただけ」という話でもあるのです。
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参考文献
- ヨガジャーナルオンライン「ADHDとともに生きるセレブたち」(2023年)
- 静岡新聞「ヴァージン・グループを築いた実業家、リチャード・ブランソンに学ぶ」
- カラパイア「イーロン・マスク、自閉スペクトラム症であることを初めて明かす」(2021年)
- 就労移行支援の保健室「ディスレクシアを持つ有名人・芸能人一覧」
- ADHD情報局「イーロン・マスク氏、ASDの特性がプラスに働く現実」




